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申請時における準備状況

本研究メンバーのうち小塩・土居・臼井以外は平成18年度から開始した特別推進研究「世代間問題の経済分析」の参加メンバーであり、既にかなりの研究成果を得ている(後掲の「特推2-8」(13-14頁)参照)。本研究は基本的にこの特別推進研究を深化・飛躍させるものである。

高山は上記特別推進研究の研究代表者として研究全体をリードし、年金問題を精力的に研究してきた。その研究成果(バランスシート・アプローチの提案、incentive-compatibilityへの着目、social pensionの提案、年金記録問題の国際比較など)は内外で高い評価を既に獲得している。地球温暖化および代理懐胎の問題に焦点をあてる鈴村の研究は、経済学の知見にくわえて倫理学・道徳哲学・政治哲学自然科学(とりわけ生命科学)の知見を必要とする。鈴村は、日本学術会議第1部(人文学・社会科学)の会員として、世代間倫理をめぐる哲学的研究の現状を知る上で理想的な立場におり、第2部(生命科学)および第3部(理学・工学)の先端的研究者と交流するための有効なチャンネルも有している。日本学術会議副会長の鈴村は、地球温暖化および代理懐胎の問題に関する日本学術会議の見解を査読責任者としてとりまとめてきた。原も社会的な時間割引率に関する研究成果をJETやJMaE等に発表しており、準備は既に整っている。玄田が所属している東京大学社会科学研究所は社会調査・データアーカイブ研究センターを有し、個票データに含まれる個人情報の保護や管理に関する環境やノウハウを十分に整えている。世代を研究するのに有益なデータも上記の研究センターに複数委託されている。また地域における包括的なフィールドワークの円滑な遂行には地域関係者との連携と信頼の構築が重要であるが、玄田は希望学研究のなかで自治体との協力関係を培ってきた。清水谷はJSTARを2回にわたって実施し、その成果をとりまとめるとともに第3回目の実施に向け周到に準備中である。小塩は全米経済研究所が主催する社会保障の国際比較研究プロジェクトに10年以上前から日本グループの一員として参加しており、その成果は他の国の実証研究とともに研究書として順次刊行されている。くわえてJSTARの設計にも参加した。さらにJournal of Income Distributionの日本特集号(2007年)に客員編集者の一人として参加したほか、子育て支援や教育需要に関する多くの査読つき論文を発表している。臼井は、これまで男女間賃金格差を研究してきたので、職業情報データやその利用方法に詳しい。さらにJSTARの質問票作成に参加した。小椋は、日本では高齢化により増加する医療費の負担が職域保険の被保険者と政府に集中しており、国民健康保険の財政基盤強化なしには公的医療保険制度全体の安定は図れないこと、さらに企業負担分の医療保険料がほとんどすべて正規雇用者の賃金に帰着しており、医療費負担が労働所得に集中することを避けるためには大規模な消費税の投入が不可避であることを示した。小椋を中心とする医療班はレセプトデータをはじめとする各種のマイクロデータ解析に精力的に取りくんできた。土居はこれまで日本の地方財政制度・法人税制・国債管理政策を研究してきた。日本の地方財政制度は中央集権的であり、地域によって便益が異なる地方公共財が必ずしも効率的に供給されていないので、地方分権化は効率性を向上させる余地がある。一方、法人税の負担は資本所得を得る者だけでなく労働所得を得る者にも帰着している。さらに異時点間における資源配分の効率性を可能なかぎり阻害しない形で国債発行・償還のスケジュールを検討することが重要である。土居は世代間問題に焦点をあてながら地方分権改革・税制改革や財政健全化のタイミング等を包括的に扱う。その前段階の知見として、これまでの研究が役立っている。青木は、消費財の質と賃金の決定要因である熟練度はどちらも経済の科学技術によって決まるという文脈で技術革新誘導の基本モデルを発展させる。さらにDemeny投票法等に関する論文を執筆ずみである。

本研究で計画している国際コンソーシアムとしてのLOSEFの高い必要性は、平成20年2月にミュンヘンでIfo研究所と一橋大学が共催した少子化に関する国際会議の総括討論で各国の参加者が確認しあったものである。現在、その実施に向け日韓米独等で調整しており、日本では阿部彩も全面協力を約束している。

なお、本研究を推進するための専用スペースを特別推進研究秘書室および世代間問題研究機構としてそれぞれ一橋大学経済研究所内に確保した。各研究メンバーは上述の特別推進研究等を通じて内外における研究者ネットワークをかなりの厚みをもって既に構築し、強化中である。全体として本研究の準備は十分な具体性をもって整っている。

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